恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(9)


ブローティガンは半年も待たされたのに、ふたりの仲を取り持つのに一役買ってくれた。
きっとこの本は、今後も姫と男の間を取り持ってくれるだろう。

どんなに想いを伝えても、哀しいけれど届かないときは届かない。
すべてはタイミングなのだ、と姫は思う。
だから、気づいたのがきっと今で良かったのだ、と。

この世の中に、間違いなんてきっとひとつもないのだろう。
すべての出来事は、偶然のように見えて、寸分違わぬタイミングで、起きている。

タイミングが合わなくて、もしもうまくいかないように見えたら、きっと今はそのときじゃないのだろう。
でも、あきらめたらおしまい。

想いは、きっと、叶うから。



          【episode21 終わり】




ブローティガンの詩集(1)
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(8)


「ねぇ。今、ブローティガン、手に持ってるんだよね?」
男がどことなく、悪戯っぽい口調で言った。

「うん。え? まだ何かあったの」
「ううん、今思いついたんだ」
「なぁに?」
「姫は池澤夏樹さんのファンだから、ブローティガンの詩じゃなくて、訳のほうで言うね」
「うん、なんだろう」

「『こんなに優しくやってもらったことはなかった』っていう詩があるんだ」
「うん」
「それ、お願いしてもいい?」
「え? わたしが何かするの?」
「うん。その詩、読んでくれたらわかるから」
「うん、わかった。読んでみるね」
「その通りにしてくれたら、今日まで姫が気づかずにいたこと、赦してあげる」
「わかったわ。じゃ、読んだらすぐ行くから」
「ありがとう。待ってるよ」
「うん。ありがとね」

男が先に電話を切ったのを確認してから、姫も切った。
思い切って電話して本当に良かった、と姫は心の底から思った。
そして、はやる心を抑えて、男の指定した詩のページを探し始める。

あった。これだ。
引用してみる。



こんなに優しくやってもらったことはなかった
                       ―Mに

きみの口の甘いジュースは
蜂蜜を浴びた城のようだ。
こんなに優しくやってもらったことはなかった。
きみは城の輪をぼくの  (以下略)



ちょっと赤面。
でも、これは赦してもらうためだし、仕方ないわね。
姫は自分に言い聞かせると、片づけもそこそこに、シャワーを浴びて歯磨きをすると、いそいそと男の新しい家に向かった。



          【episode21 (9)へ続く】


☆参考文献☆

『チャイナタウンからの葉書』
R.ブローティガン 著
池澤夏樹 訳
株式会社 筑摩書房
2011年5月10日 第一刷発行







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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(7)


表紙カバーの後ろに、もう一枚同じハートの付箋紙がくっついていた。
【これが、僕の新しい住所。いつでもおいで。京都市上京区……】

「えー?」
姫は驚きのあまり、それしか言葉が出てこなかった。
姫の家からそう遠くない住所が、そこに記されていたのだ。

「びっくりした?」
「うん。もうバカ! ねぇ、いつ、引っ越したの?」
「去年の姫の誕生日」
「意地悪! なんですぐ言ってくれなかったの」
「姫が自分で見つけてくれるまで待ってみようと思って」
「一生気がつかなかったら、どうするつもりだったの」
「そのときは、そのときさ」

「だから、いつ逢えるかわからない、って言ったの? それに、プレゼントも送らなくていいって」
「うん」
「だけど、今までよくばったり出会ったりしなかったわよね」
「うん、不思議だな」

「ねぇ。わたしのこと、試したの?」
「うーん、試したって言うと言葉が悪いけど、姫なら気がついてくれるかなって思って。だから、もし僕の誕生日にプレゼント送ってくれても、もう引っ越しちゃってたから、届かなかったんだよ」
「ほんと、あなたって意地悪なひとね。信じらんない」
「でも、良かったよ。僕の誕生日までに間に合って」
「うん。もうダメかも、って思ってたのよ。けど、あきらめたら絶対終わりだからって」
「そうだよ。僕もそう。あきらめずに、姫に賭けてた」

「でも、もうこんな変なドキドキは嫌!」
「ごめん、ごめん。一応、僕の誕生日をタイムリミットにしてたんだ。それでも気がつかないときは、しょうがないから姫の家に押しかけようと思ってた」
「そうだったのね」
「うん」

「ね、まだあなたのお誕生日じゃないけど、これから行ってもいい?」
「うん、もちろん。『いつでもおいで』って書いてただろ?」
「うん、ありがと」


          【episode21 (8)へ続く】




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