恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode12 卒業旅行(10)


予定の七時を少しオーバーしたところで、やっと食事の用意が整った。

「カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「イェーイ」

ビールやジュースのグラスが、あちこちでカチャカチャ音を立ててにぎやかにパーティーは始まった。

「うん、うまい」
「美味しーい」

みんなが喜んでくれたので、苦労して作った甲斐があった、と姫は嬉しくなった。
そして、今まであまり話せなかった長瀬や、カジノでコインを分けてくれた大輔とも話せてとても楽しかった。

戸川は姫の隣に座っていたけれど、その隣にはしずちゃんが座っていて、しずちゃんとずっと話していた。
リナの隣には、やはり馬場がいた。


途中でトランプをしたり、みんなで写真を撮り合ったりして、あっという間に十時が過ぎていた。
酔いも少し回ってきた姫は、バルコニーで涼むことにした。
二十階を超える高層階から、夜の海を見下ろす。
今ここにいることは確かな現実なのに、ふわふわしていてまるで夢を見ているような感じだった。
波の音がわずかに聞こえる。

ガラス戸の開く音がして、長瀬がやってきた。

「どうしたの? 大丈夫?」
「うん、ちょっと酔い醒まし。長瀬くんこそ、どうしたの?」
「戸川が心配して、『姫さんのこと、見てきて』って言うから」
「なーんだ、そうだったんだ。ちょっと残念」
「うん? なんで?」
「長瀬くんが心配して見に来てくれたんじゃないから」

長瀬は苦笑いした、ように見えた。

「長瀬くんと戸川くんって、仲良いのね?」
「うん、大学入ったときからのつきあいで、趣味も同じだし」
「趣味って?」
「バイクとカメラ」
「そうなんだ? だから、戸川くん、いつもカメラマン買って出てくれたんだ?」
「うん、だと思うよ」

「わたしもバイクとカメラ、好きよ」
「え? 姫さんも乗るの? 意外だなぁ」
「といっても、わたしは免許ないからね(笑)」
「彼氏の後ろとかに乗っけてもらうの?」
「まぁ、そんなこともあったかな」

「今は? つきあってる人とか、いるの?」
「ううん、いない。長瀬くんは?」
「いるよ」
「そう」

一気に姫の声は落胆したものになった。
遠い海を無言で見つめる。

これだけカッコいい人だもの、いて当然とは思っていたけど、本人の口からいともあっさり聞かされるとちょっとショックだった。





          【episode12 卒業旅行(11)に続く】
  




episode12 卒業旅行(1)
 は、こちらをご覧ください。
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episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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