恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode12 卒業旅行(11)


「戸川がさぁ、姫さんとふたりで写真撮りたいんだって」
追い打ちをかけるような、長瀬の言葉。

「そう」
「いいかな? 明日、最後だし」
「そうね」

曖昧に答える姫。
頭の中に、しずちゃんの顔が浮かんだ。ここで、しずちゃんのことを言うべきか迷った。
部屋の中をチラッと見る。戸川の隣でしずちゃんが楽しそうに話している。戸川も楽しそうだ。

「戸川くんってさ、しずちゃんのこと、なんか言ってた?」
「しずちゃん?」
「ほら、今も戸川くんの隣で、ずっとしゃべってるじゃない?」

長瀬も部屋の中をチラッと見る。
「あぁ、あの子ね? 別に、特に何も言ってなかったけど」
「そう。……ねぇ、馬場くんって、リナのこと、もしかして好き?」
「馬場? うーん、よくわかんないな。あいつも優しいヤツだよ、戸川もそうだけど」
「そうなんだ。……長瀬くんと今日ここで話せてよかった。ありがとうね」
「いや、そんな……」

「最初に会ったときから、長瀬くん、カッコいいなって思ってたけど、ずっと話す機会なかったから」
「そんな、俺、カッコよくなんてないよ」
「カッコいいよ。友達思いだし。彼女いなかったら、『つきあって!』って言いそうになっちゃった」
「えっ?」
「なーんてね。わたし、まだ酔ってるみたい。ごめんね、今の聞かなかったことにして」

そこへ、リナがやってきた。

「姫、大丈夫? あんまり遅いから心配しちゃった」
「大丈夫よ、ありがとう。だいぶ酔いも醒めたみたいだから部屋に戻るわ。長瀬くん、ありがとうね」
「うん」

リナが来てくれてちょうどよかった。
わたしはなんてことを長瀬に言ってしまったんだろう、と姫は少しだけ後悔した。

長瀬が返事に困っていた。
つきあいたいとまで思っていたわけではないのに、はずみでついそんな言葉が出てしまったのだ。
いくら戸川に頼まれて来たのだとしても、それは言わないでほしかった。
だから、ちょっと長瀬を困らせてみたくなった。
ただ、それだけ……。






          【episode12 卒業旅行(12)に続く】
  




episode12 卒業旅行(1)
 は、こちらをご覧ください。
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http://cafesanur.blog.fc2.com/blog-entry-85.html


episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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