恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode12 卒業旅行(15)


「だけど、先月のスキーのときもそうだったよね?」
姫が思い出したように言った。

「え、なにが?」
「ほら、江崎さん」
「江崎さん?」
「そう。しずちゃん、江崎さんがいいって、結構熱烈だったでしょ?」
「うん、そういえば」

「だけど、江崎さんはリナのことが好きだったじゃない?」
「好きって、言われたわけじゃないけど……」
「でも、スキーから帰って写真交換会みんなでしたとき、江崎さんにわたし言われたよ」
「え? なんて?」
「『リナちゃん、彼氏いるの? いないんだったら連絡先教えて』って」
「え? それで、姫、教えたの?」
「うん」
「なんで、勝手にそんなことしたの?」
「ごめん。でも、リナと江崎さん、スキー場でもいい雰囲気だったし……」
「まぁ、嫌じゃないけど……」
「まだ江崎さんから連絡ない?」
「うん」
「そうか。きっと、わたしたち、あれからすぐオーストラリアに行っちゃったから……」
「そうか~」

リナのちょっとがっかりしたような顔を見て、姫は確信した。
きっとリナも江崎のことが好きに違いない。

江崎は実家の千葉での就職が決まっていたので、もしこれからリナとつきあうのなら遠距離ということになる。
どうするのだろう?
姫がそんなことを考えていると、リナに逆に訊かれた。

「ねぇ、もしもよ、もしも、戸川くんが姫とつきあいたいって言ったら、どうする?」
「え~? それはないよ」
「わかんないわよ」
「でも、彼は川﨑だよ。わたしは京都なんだし、どうやってつきあうのよ?」
「遠距離恋愛よね」
「さっき、わたしもそんなこと考えてたんだ」
「なんだ、やっぱりその気なんじゃない?」
「違うわよ。リナと江崎さんのこと」
「え?」

「リナ、どうするの?」
「どうするって……。まだつきあうって決まったわけじゃないし……」
「でも、江崎さんから言われたら断らないでしょ?」
「う~ん、わかんない」
「お似合いだと思うけどな」
「もちろん、江崎さんはすごくいい人よ。だけど、まだよくわからないところもたくさんあるし……」

「つきあっていくうちに、いろいろわかってくるもんよ。どんな人かわからないから、つきあってみるんじゃないの? 何もかもわかってる人とつきあったって、そんなのつまんないわ」
「まぁ、姫はそういうタイプかもね。松本さんのときだって、そうだったものね」
「そうね、彼は特別未知数だったから。今でもわからない部分だらけよ」
「また逢いたくなった?」
「う~ん、そうね、機会があれば……。そんな簡単に忘れられないもの」
「まだ、好きなの?」
「う~ん、多分嫌いにはならないかな」
「まだ引きずってるってこと?」
「いや、そういうのはもうないけど」
「じゃあ、新しい人が現れたらその人とつきあう?」
「うん、多分ね」
「それが、戸川くんかもしれないよね?」
「いや、それはどうかな。松本さんと出逢ったときみたいな、ドキドキする感じとか、戸川くんにはなかったから」
「そうなんだ?」
「うん。ただ、一緒にいると穏やかな気持ちにはなる。安心するっていうか」
「ふーん、そういうのもアリなんじゃない?」
「そうかな? 恋愛っていうより、友情って感じのほうが強いんだけど」
「友達から恋愛に発展っていうのも、可能性としてはあるよね?」
「まぁね。でも、わたしの人生訓、知ってた? 『ドラマティックじゃない人生なんて、生きる意味がない』(笑)」
「姫らしいわ(笑)」





          【episode12 卒業旅行(16)に続く】
  




episode12 卒業旅行(1)
 は、こちらをご覧ください。
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episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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