恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode14 入社式前日デート(2)


「ねぇ、姫さん、お腹空いてない?」
少し走ったところで、戸川が姫に訊いた。

「うん、ちょっと空いてきた」
「じゃ、ちょうどいいかな。これから車で一時間もかからないから」
「そうなんだ?」
「うん。……姫さんって、好き嫌いとかある?」
「うーん、ないかな。だいたいなんでもOK。あ、レバーはあんまりだけど」
「よかった。じゃ、お寿司とトンカツ、どっちがいい?」
「うーん、どっちも好きだけど……。今はお寿司の気分かな」
「わかった、じゃ、お寿司ね」
「うん」

戸川はどんなお店に連れて行ってくれるのだろう。
またしても、姫は松本さんのことを思い出してしまう。
あの日本海の、カウンターだけのお寿司屋さん。


「ねぇ、戸川くんって、よくお寿司屋さん行くの?」
「うーん、たまに。誰か来たときとか、連れて行くくらいかな」
「そう。わたし、久しぶりなんだ。楽しみ。……実はね、リナと一緒に今日来たんだ。戸川くんによろしくって言ってたよ」
「え? そうなの? で、彼女はどこ?」
「彼氏とディズニーランド」
「え? リナさんって、彼氏いたの?」
「いたっていうか、最近ね、つきあいだしたの」
「そう」
「うん。なんで? いるように見えなかった?」
「うん」

「そうか。わたしは?」
「姫さん?」
「うん。いるように見えた?」
「うん。てっきりいると思ってた」
「そうなんだ。じゃあ、しずちゃんは?」
「いないと思った」
「どうして?」
「なんとなく」
「ふーん。……ねぇねぇ、戸川くん、気づいてたでしょ?」
「何に?」
「しずちゃん」
「彼女が?」
「うん。しずちゃん、戸川くんのこと、いいなって最初からずっと言ってたの」
「そう? 知らなかった」
「ほんと? よく一緒にしゃべってたじゃない? 最後のパーティーのときもそうだし、空港でだって一緒に写真撮ってたでしょ?」
「うん」
「何も思わなかった?」
「うん。ただ、よくしゃべる子だなとは思ったけど」
「ふーん、それだけ?」
「うん」
「そうなんだ。じゃ、わたしのことは?」
「姫さんのこと?」
「うん、どんなふうに思ってた?」
「え~?」

戸川は少し照れて、困ったような顔をしている。
「今言うの?」
「うん」
「そりゃ、……可愛いな、とか」
「うふ。そうだったんだ。うれしい」
「他には?」
「他に?」
「うん、他にどう思った?」
「え~と……」

戸川は耳まで赤くなって、ますます困った表情になっていった。
「もう、いいよ。戸川くんの困った顔見るの、楽しい」
「もう~、からかわないでよ」
戸川は照れ笑いをしていた。ちょっとかわいい。


       【episode14 (3)に続く】





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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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