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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode14 入社式前日デート(5)


それからまた車に乗って、「ザ・横浜」という感じの中華街へ案内される。
肉まんを食べながら歩いている人が多い。甘栗の試食販売もしている。

ちょっとごちゃごちゃしたような大通りから、一本裏通りへ入るととたんに人も少なくなる。

「俺の父親、昔、この辺でコックをしてたらしいんだ」
戸川がポツリと言った。

「そうなの?」
「うん。日本人じゃなくってね」
「そうなんだ」

戸川は自分の父親の話をするために、この裏通りに入ったのだろうか。
彼の生い立ちのようなものを聞けば聞くほど、興味がわいてくる。
ちょっと悲しい過去を持っている人なのかもしれない。
あえて訊かないほうがいいだろうけど。


「さぁ、次に行こう!」
気分を変えるように、意識的に元気な声で戸川が言った。

「うん、今度はどこ行くの?」
「赤レンガ倉庫」
「わぁ~! そこ、すっごく行きたかったんだ」
「撮影でもよく使われるからね」
「うん」
「ここから遠いの?」
「ううん、そんなに遠くないよ。山下公園を通って行こう」
「うん!」

山下公園は平日のせいか、そんなに人も多くなかった。
「このへん、何も考えずにぶらっと歩くのって素敵」
氷川丸を横目に見ながら、姫はつぶやいた。
多分、それは戸川の耳には入っていないだろう。

彼が姫に提案する。
「ソフトクリーム、食べる?」
「うん」
「ちょっと待ってて」

移動式のソフトクリームを売っているおじさんから、戸川がふたつ買って戻って来る。
「はい」
「ありがとう」
「冷たくて美味しい」
「ほんとね」
「そういえばさ、メルボルンでも食べてたよね?」
「あぁ、あの庭園の外の?」
「うん、俺たちも食べたよ」
「そうだったの? わたしはリナと二種類買って、半分こして食べたの」
「そうだったんだ? しずちゃんは?」
「いらないって、先にバスに戻ってたから」

「もともとリナさんとふたりで行くはずだった、って言ってたもんね」
「うん、なんで?」
「いや、リナさんと仲良いとは思ったけど、しずちゃんって、どうなんだろうって」
「どうって、どういう意味?」
「いや、これは俺の勝手な思い込みっていうか、あんまりつっこまれても困るんだけど、なんかさ、ちょっとふたりとは違う雰囲気っていうか……」
「あ~、やっぱそういうのって、わかっちゃうのかな?」
「ん?」
「もともと、しずちゃんってわたしの友達ってわけじゃなくて、リナの友達だったの。リナをスキーに誘ったら、しずちゃんも付いてきた、みたいな」
「そうだったの?」
「うん。オーストラリアもそんな感じ」
「じゃ、もともとそんな仲のいい友達ってわけでもないんだ?」
「うーん、まぁ。リナに比べたら全然かな」



       【episode14 (6)に続く】



episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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