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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode14 入社式前日デート(7)


「ほら、もうすぐだよ!」
なんとなく気まずさが漂うふたりの空気を換えようとして、戸川が明るく言う。

「うん!」
姫も意識して、明るく返事する。

それから十分くらい歩くと、目の前に広い場所が現れた。
「ここだよ」
「うわぁ、テレビで見るより広いんだね」
「そうかな」
「うん。なんか、感激。ここ、走ってたんだよね、柴田恭平とか舘ひろしが」
「うん」

姫は初めて訪れた赤レンガ倉庫で、わけもなく走ってみたくなった。幸い、辺りには誰もいない。
ちょっと走ってみる。気持ちいい。

「姫さん、急にどうしたの?」
戸川が笑いながら見ている。

「え? なんとなくね。……カメラ持って来ればよかったな」
「心の目にしっかり焼き付けて」
「うん」

姫は目を瞑って、永久保存版として刻み込む。
いつの間にか夕陽が、赤レンガ倉庫をオレンジ色に染めていた。
戸川の顔も少し赤みを帯びている。

「戸川くん、ありがとうね。今日はいろんなところに連れて行ってもらって、すっごく楽しかった」
「ううん、こちらこそ、遠いところ来てくれてありがとう。俺も姫さんと一緒に居られて、すごくうれしかった」
「もうそろそろ帰らなきゃ。あまり遅くなると、おばあちゃん心配するから」
「そうだね。明日は何時から?」
「十時に入社式で、その後いろいろ本社で夕方まであったかな」
「そう。明日はそのまま京都に帰るの?」
「ううん。会社でホテル取ってくれてるの。だから、明後日の午後の新幹線で帰るの」
「そうなんだ? じゃ、明日の晩ご飯とかは?」
「ホテルで用意されてるみたい」

「そっか。その後は?」
「その後って?」
「夜とか、予定あるの?」
「ううん」
「だったら、リナさんとふたりでちょっと出て来ない?」
「どこへ?」
「馬場んち、寿司屋なんだ。ちょっと行ってみない?」
「あ、そういえば、馬場くん、お寿司屋さんだって言ってたよね」
「うん」
「いいの? 行ってみたい。でも、時間遅くなっちゃうけど、迷惑じゃないかな?」
「何時くらいになりそう?」
「予定表には七時に夕食って書いてあったから、出掛けるとしたら八時半とかになっちゃうかも。それでもいいのかなぁ?」
「うん、あいつんち、十一時までやってるから大丈夫だよ」
「うわぁ、楽しみ。リナが聞いたらびっくりするわよ」
「だろうね」
「じゃ、どうしたらいい?」
「ホテルってどこなの?」
「新宿」
「わかった。だったら近いから余裕で大丈夫だよ。ホテルまで迎えに行くから、準備できたらロビーで待っててくれる?」
「うん、わかった。なんかわくわくしちゃう。馬場くんもびっくりするんじゃない?」

姫は面倒くさいなと思っていた明日の入社式が、早く来ないか待ち遠しくなった。


       

       【episode15 に続く】





episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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