スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode15 微妙なダブルデート(1)


四月一日。
滞りなく本社での入社式は終わった。

姫は、今日の戸川との約束の話を、早くリナに言いたくてうずうずしていたのだが、なかなかふたりきりになるチャンスがなく、結局昼休みになってしまった。

ふたりがトイレで一緒になったとき、姫が小声で話しかけた。

「今夜ね、新大久保にある馬場くんのお寿司屋さんに行くんだよ」
「え~? 馬場くんって?」
「うん。リナも一緒にね」
「馬場くんって、あのオーストラリアで一緒だった?」
「そう!」
「なんで……なんで?」
「昨日ね、戸川くんが行こうって」
「え? よくわかんないんだけど……なんで?」
「だから、戸川くんがリナも一緒に行こうって」

リナが事態が飲み込めないのも無理はない。姫だって、意外な展開だったのだから。

「馬場くんさ、『今度食べにおいでよ』って、オーストラリアで言ってくれてたじゃない?」
「うん。だけど、それは社交辞令でしょ?」
リナは冷静に言った。

「そうだと思うよ。でも、実際に『来ちゃった!』なんて行ったら、ちょっと面白いじゃない?」
そう言うと、姫は楽しそうに笑った。


リナと江崎は昨日、ディズニーランドのすぐそばのホテルに泊まったらしい。

「わたしたち、いったい何しに来たんだろうね」
いたずらっぽく笑いながら、リナにウインクする姫。

「ほんとだね。本社が東京でよかったね。最初はわざわざ入社式のためだけに来るのって、嫌だなって思ってたけど」
「逆に感謝しなきゃね。交通費も宿泊費もただで……」

そこへ、同期入社のほかの女子が入ってきたので、ふたりは慌てて口をつぐんだ。


無事、本社での午後の行事も済み、夕方になって姫たちはホテルにチェックインした。
ラッキーなことに、姫とリナは同じ部屋だった。
昨日はそこまで考えていなかったけれど、もし誰か別の人と同じ部屋になっていたら、夜遅くにどこへ行くのかと不審に思われるかもしれない。
きっと神さまが、うまく導いてくれたのだろう。


午後九時前ごろ、姫とリナがロビーで待っていると戸川が現れた。

「遅くなってごめん。長瀬も誘ったんだけど、どうしてもバイト休めないって」
「そうだったの?」

姫が意外そうに言った。
戸川が長瀬を誘っただなんて……。昨日は、そんなこと言ってなかったのに。
戸川が自分に逢わせてくれようとしたのか、それとも、本当は声をかけていないけど、姫のために嘘をついたのか、彼の本心が読めなかった。

「リナさん、久しぶり。元気だった?」
「うん、戸川くんも元気?」
「うん。じゃ、行こうか?」
「うん」

リナと戸川の、淡白な再会シーン。


馬場のお店は、姫たちの宿泊ホテルから本当に電車ですぐだった。
ガラス戸を勢いよく開けて、戸川が声をかける。
「よぅ、馬場」

「おぅ、戸川。……いらっしゃい、みなさん、おそろいで」
カウンターの中から、馬場が笑顔で出迎えた。

「ほんとに来ちゃった」
姫がペロッと舌を出して、笑いながら言った。

「こんばんは。お久しぶりです」
リナが、かしこまって言った。



        【episode15 (2)に続く】






episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

恋愛小説 ブログランキングへ

☆ お読みいただき、ありがとうございます ☆
関連記事

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

cafe sanur

Author:cafe sanur

現在の閲覧者数:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。