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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode16 遠距離恋愛(1)


東京での入社式を終え、いよいよ京都のホテルでの配属先が決まった。
姫とリナは同じホテルではあったが、別々のセクションになった。
まぁ、どこも新人はひとりずつだったから、当然と言えば当然だ。

シフト制の仕事だったので、早番、遅番のニ交代が多いが、セクションによっては中番や夜勤もあった。幸い、ふたりともニ交代だけだった。
休みの希望も出せたが、新入社員は最後に希望を出すのが習わし。先輩が予定を入れてくれないと、自分の予定を立てることもできない。

入社してすぐは希望も聞かれず、出来上がったシフト表に基づいて勤務した。
だいたい三日か四日働いて一日休み、というパターンだ。
次の月からは休み希望も入れられる、というので楽しみにしていた。
サービス業なので、土日はほとんど出勤で、休み希望も入れづらい。


働き出して十日くらいしたころ、久しぶりに戸川に電話してみた。
「戸川さんのお宅でしょうか?」
「あ、姫さん?」
「うん。よくわかったわね」
「うん。元気?」
「うん、まあ。戸川くんは?」
「うん、俺も。……なんか、あった?」
「あの返事、そういえばしてなかったなと思って」
「え?」

姫は「あの返事」と言っただけで、戸川がすぐにわかってくれるものだと思っていた。
でも、あれから十日以上も経っている。ピンと来なくて、むしろ当たり前か。

「ほら、つきあう話」
「あぁ」
戸川は、わざと気づかないふりをしたのかもしれない。素っ気なく答えた。

「いいよ」
「ほんとに?」
戸川の声が裏返った。

「うん」
「姫さん、ありがとう」
「いいえ~」
「うれしいな~。まさか、その電話だなんて思ってもみなかったから」
「そう?」
「うん。今までずっと考えてたの?」
「ううん、そういうわけじゃないけど。なんか毎日があっという間で……」

「ねぇ、姫さん、疲れてる? 大丈夫?」
戸川が心配そうに訊いた。

「うん、慣れなくて大変。ずっと立ちっ放しだから、足もむくんじゃうし……」
「そうなんだ、大変そうだね」
「うん。戸川くんは?」
「え? 俺? 俺はバイトの延長っていうか、そのまま就職しちゃったから、まぁ慣れてる仕事だし、そんなに変わらないかな」
「そうだったんだ?」
「うん、今まで週四日行ってたところが、二日増えただけ」
「え? じゃあ、休みは週一回だけなの?」
「うん、日曜だけ。でも、もうすぐゴールデンウィークだから、そこは一週間休みなんだ」
「そう。楽しみね」
「でも、特に予定もないから」
「そうなの? こっちは曜日関係なくシフト制で、週に一回か二回休みなんだけど、ゴールデンウィークも関係ないのよね」
「それは辛いね。今度いつ休み?」
「えーっと、ちょっと待ってね。シフト見てみる。……えっと、次は明後日かな」

「そう。ねぇ、姫さん、ゴールデンウィークって、一日も休みないの?」
「ううん、そんなことないと思うよ。長くても四連勤だから、一日くらいは休めると思う」
「それって、いつになるか、もうわかってる?」
「ううん、まだ五月のシフトできてないの」
「いつごろ、できるの?」
「えっと、シフト希望が十五日までだから、二十日ごろには決まるんじゃないかな」

「そうなんだ。あの、もし姫さん、予定がなかったら、その日逢わない?」
「え? どこで?」
「今度は俺が行くよ、京都に」
「え? ほんと?」
「うん」
「でも、わたし、多分連休取れないと思うけど……」
「いいよ、俺、日帰りでも」
「そんな……無理しなくてもいいよ」
「ううん。逢いたいんだ、姫さんに」
「そりゃあ、わたしも戸川くんに逢えたらうれしいけど……」
「だったら、決まり。休みが決まったら教えて」
「うん。でも、ほんとにいいの?」
「もちろん」
「わかった。じゃあ、決まったらすぐまた電話するね」
「うん、楽しみだな」
「わたしも」
「あ、あんまり長くなると悪いから、もう電話切るね」
「うん。じゃ、またね」
「うん、また……」


        【episode16 (2)に続く】




episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月







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