恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode17 テニスサークル(1)


その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、姫はテニスに夢中だった。
大学に入ってから始めたので、テニス歴はまだ二週間。
空振りも多く、ラリーもあまり続かなかったけれど、ボールを追いかけるのが何よりも楽しかった。

一緒にテニスサークルに入った弓子は、高校時代に軟式テニスをしていたため、姫とは比べものにならないほど慣れていた。
「軟式とはバックが違うから……」と言いつつも、どことなく余裕が感じられた。

男女合わせて二十名ほどのサークル。
男子はみんなD大学で、女子は姫たちの女子大のほか、短大も含め、四校から数名ずつといった感じの構成だった。
普段、全員がそろうことはまずなく、先週の新歓コンパで、姫はようやくほぼ全員の顔と名前が一致した。

今日の練習には、いつものメンバーのほか、新歓コンパで初めて顔を合わせた三年生の露木もいた。
彼はバイト中心の生活をしているとの噂で、めったに練習に来ることはないそうだ。

「おぅ、露木~。珍しいな、お前が顔出すなんて」
早速、キャプテンに嫌味を言われる。

「まぁな、可愛い子いっぱい入ったから」
露木は、わざとそんな言い方をしたように姫は感じた。
少なくとも、この前のコンパでの印象とは違った。

「早く着替えて来いよ」
キャプテンに促されて、露木はコート横を通ってロッカールームに行くとき、姫にニコッと笑いかけた。
姫もうれしくなって、微笑み返した。

姫の隣にいた弓子が、あれっという顔をした。
「ねぇ、あの人、今、姫に向かって笑った?」
「え? わかんない」
姫はちょっととぼけてみせた。

だって、この間の約束は、姫と彼だけのものだから……。



          【episode17 (2)に続く】








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   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月







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