恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode18 野球観戦(6)


いたたまれなくなったのか、売り子の男は「あの、僕、弁償します」と小さな声で言った。
「え、いいよ」
と言う姫の答えをかき消すように「してもらいや!」と、奥さんが追い打ちをかけた。
「姫ちゃん、きっちりクリーニング代もらいや。その子の気が変わらへんうちに」と言って背中を押した。

姫の赤いスカートはびしょびしょで、弁償云々というより、今すぐ着替えたかった。
観戦のときは、いつもカープカラーの赤を身に着けている。
この赤いシフォンスカートは特に縁起が良く、これをはいてきて負けたためしはない。

冬ではないから濡れていても寒くはないけれど、ビール臭い上に、腿にぴったり貼りついた感触が何とも言えず、とにかく気持ち悪かった。普段、飲むのは美味しいのに……。

「どっかに洋服売ってないかしら」
姫が困った顔で売り子の男に訊く。
「Tシャツとかなら下のショップで売ってるんですけど、ボトムスはちょっと……」
男は申し訳なさそうに言う。
「どうしよう」
今度は姫が困る番だった。


          【episode18 (7)に続く】





episode18 野球観戦(1)
 は、こちらをご覧ください。
   ↓
http://cafesanur.blog.fc2.com/blog-entry-170.html




episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月







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