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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode20 やさしい雨(8)


本屋を出ると、男は大きな16本の骨の傘を広げた。紺色の和柄のシックな傘。

「うわぁ、素敵な傘」
「よかったら、一緒に入ってく?」
「うん」

姫は自分の傘を閉じたまま左腕に掛けると、男の傘の中に滑り込んだ。

「ほら、濡れるといけないから、もっとこっちに」
男がさりげなく、姫の肩を抱き寄せる。

男の体温を感じて、姫は穏やかな気持ちになった。
このひと月、いや、もっと前から忘れていた温もりだった。

「今日は僕のうちで食べよう」
姫の歩幅に合わせて、ゆっくり歩き出しながら、男が提案した。

「うん!」
うれしそうに、うなずく姫。

「じゃあ、このままスーパーに寄って帰ろうか」
「そうだね。なんか楽しくなってきちゃった」


夏至に向かって、日は少しずつ長くなっている。雨が降っているのに、辺りはまだうっすら明るい。
しっとりとした、やさしい雨に包まれて、ふたりのつきあいは今始まった。

どしゃ降りや、時には雷雨、嵐になることもあるだろう。
それでも、この傘なら何とか凌げそうな気がした。

この人となら、大丈夫。
理由のない安心感が、姫をおおらかな気持ちにしていた。

短夜とはいえ、今日は長い夜になりそうだ。
たくさん話がしたかった。まだ知らない男のことを、いろいろ知りたい。そして、姫のことも知ってほしい。

初々しい気持ちで、姫は男の横顔を見上げて微笑んだ。


          【episode20 終わり】





episode20 やさしい雨(1)
 は、こちらをご覧ください。
   ↓
http://cafesanur.blog.fc2.com/blog-entry-202.html






episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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