恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(7)


表紙カバーの後ろに、もう一枚同じハートの付箋紙がくっついていた。
【これが、僕の新しい住所。いつでもおいで。京都市上京区……】

「えー?」
姫は驚きのあまり、それしか言葉が出てこなかった。
姫の家からそう遠くない住所が、そこに記されていたのだ。

「びっくりした?」
「うん。もうバカ! ねぇ、いつ、引っ越したの?」
「去年の姫の誕生日」
「意地悪! なんですぐ言ってくれなかったの」
「姫が自分で見つけてくれるまで待ってみようと思って」
「一生気がつかなかったら、どうするつもりだったの」
「そのときは、そのときさ」

「だから、いつ逢えるかわからない、って言ったの? それに、プレゼントも送らなくていいって」
「うん」
「だけど、今までよくばったり出会ったりしなかったわよね」
「うん、不思議だな」

「ねぇ。わたしのこと、試したの?」
「うーん、試したって言うと言葉が悪いけど、姫なら気がついてくれるかなって思って。だから、もし僕の誕生日にプレゼント送ってくれても、もう引っ越しちゃってたから、届かなかったんだよ」
「ほんと、あなたって意地悪なひとね。信じらんない」
「でも、良かったよ。僕の誕生日までに間に合って」
「うん。もうダメかも、って思ってたのよ。けど、あきらめたら絶対終わりだからって」
「そうだよ。僕もそう。あきらめずに、姫に賭けてた」

「でも、もうこんな変なドキドキは嫌!」
「ごめん、ごめん。一応、僕の誕生日をタイムリミットにしてたんだ。それでも気がつかないときは、しょうがないから姫の家に押しかけようと思ってた」
「そうだったのね」
「うん」

「ね、まだあなたのお誕生日じゃないけど、これから行ってもいい?」
「うん、もちろん。『いつでもおいで』って書いてただろ?」
「うん、ありがと」


          【episode21 (8)へ続く】




ブローティガンの詩集(1)
 は、こちらをご覧ください。
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episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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