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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode7 新年会(1)


その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、勤めていたのはシティホテル。
ときどき、セクション異動があり、オペレーター室勤務になって数か月、というころの出来事。

「ありがとうございます。ホテル……」
「あ、姫? あたし、リナ」

いつもお客さまからかかってくる前提で電話を受けるので、枕詞のような「ありがとうございます」に続く、ホテルの特徴的説明を言う前に、かけてきた相手が従業員なら自分の名前を名乗ってくれる。これは、オペレーターに最後まで言わせるのも申し訳ないし、また時間の無駄でもあるから、ということで暗黙のルール。
声の主は、従業員のリナ。わたしがオペレーターに来る前まで、一緒のセクションで働いていた同期。

「リナ? どうしたの」
「ケータイにかけたら留守電になってたから、こっちにかけたほうが早いかなと思って」
「こっち、ってね。これ、ホテルの代表電話でしょ。今、仕事中なのよ」

声をひそめて話していたけれど、隣の席の先輩が、かかってきた電話のお客さまと会話しながらもチラッとこちらを見たのがわかったので、回転イスをくるっと回して慌てて背を向けた。

「ごめん、手短に話すね」
「うん。外線、結構たまっちゃってるから、ほんと手短にね。で?」
「今さ、横浜で新年会やってるの。メンバーひとり足りなくて、仕事終わったら来てほしいんだけど」
「メンバーって?」
「あー、サルサの」
「サルサの新年会?」
「そう」
「でも、わたし、サルサなんて踊ったことないし……」
「大丈夫、大丈夫。今日は踊らないから。予約してるからキャンセルできないのよ。来て、食べてくれるだけでいいから」
「それなら、いいわよ」
「良かった」
「あと十五分で上がれるから」
「うん。場所はメールに入れとくね」
「オッケー」
「じゃ、あとでね」
「うん」

イスを正面にくるっと向け直すと、先輩に横目でジロッと見られた。
でも、電話が次々かかってくるから、文句を言いたくても言えない状況。
よし、このまま十五分かかり続けてくれー。
いつもは途切れることを願っている姫だが、この日は先輩に怒られるのも、言い訳するのもめんどくさかったので、早く勤務終了時間が来るよう祈るのみだった。

上がる十分前に、姫と交代で次に台に就く人が来た。
電話はかかり続けた。やはり、夕方は忙しい。この調子、この調子。思わず笑みがこぼれる。
業者からの電話を、内線で担当部署につないだのがその日の最後の電話だったので、すんなり上がれた。ラッキー!
以前、上がる一分前にクレームの電話を取ってしまったことがある。あのときは長引いて最悪だった。早く切りたいこちらの心のうちを見透かされたかのように、ごねられて三十分もクドクドお説教が続いた。

「お疲れさまです。お先に失礼します」
引き続き、台に就いている先輩に軽く会釈する。
新しい人には「よろしくお願いします。お先に失礼します」と言い、そそくさとオペ室をあとにした。
電話が途切れないのが幸いだった。部屋のガラス越しに、先輩が何か言いたそうな顔をしているのが見えたが、無視した。

「姫、オツカレ」
「お待たせ。もうちょっとで、先輩に怒られるとこだった」
「やっぱ、まずかった?」
「うん、夕方の忙しいときだもん。でも、電話が全然途切れなくてさ、結局、先輩と話してないから大丈夫。明日、わたし休みだし、当分先輩と一緒のシフトになることないから」
「そっか、良かったね」

新年会は居酒屋の個室であった。
お店に着く少し前にリナに電話しておいたので、二階の個室から入口まで降りてきてくれていた。



               【episode7 新年会(2)に続く】



episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月






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