恋愛小説:さぁ、どっち?

さぁ、どっち? case1 (4)


「ただいま」
「おかえり」

あなたが帰宅したのは、午後五時。まず、ベランダをチラッと見る。男は無反応だ。
次にソファを見る。男が座っている隣には、クッションしかない。
まさか、洗濯物、全部畳んでタンスにもう仕舞ってくれてる?

淡い期待とともに、ベランダに出るあなた。
そのとき、男が慌ててソファから立ち上がった。

「今しようと思ってたんだよ」
「…………」

あなたは聞こえないふりをして、朝からベランダに干しっぱなしだった洗濯物を、やや乱暴に取り込み始めた。

「手伝うよ」
男が部屋の中から、あなたの様子をうかがいながら声をかけた。

「手伝うですって?」
あなたは大きく目を見開き、男を凝視した。

「あとは俺がやるから」
「出かけるときにお願いしてたわよね?」
「あぁ、だから今からやるよ」
「もう五時よ!」
「だから、やるって言ってるだろ!」

あなたの語気が強まったのを受けて、男も不機嫌モード全開に。
あなたは心の中でつぶやく。
「不合格」

男とそれ以上口論するのも嫌だったので、あなたは洗濯物を男に任せ、洗面所へ行き、手洗いとうがいをした。
そして、何事もなかったかのように、晩ごはんの支度を始めた。
いつまでも気分の悪いままいることは、自分自身にとってもマイナスだ。

食事は淡々と進んだ。食器洗いを男がすることになっていたが、あなたは敢えて何も言わずに自分でさっさと洗い始めた。
男は「これもよろしくー」と、慌てて自分の食器をキッチンに運んできた。
本来は自分がすべきことなのに、とあなたは内心腹立たしく思いながらも、無言で受け取ると一緒に洗った。

「決めた」
水道の音にかき消されて、男には聞こえなかった、あなたの決断の言葉。


【さぁ、どっち? case1 (5)に続く】






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