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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode9 タロット占い(1)


その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、大学の女子寮では、姫のタロット占いの的中率が評判になっていた。
姫のタロット歴は、中学生のころからなので五年あまり。
高校の文化祭で「占い館」をしたところ、行列ができるほどの人気だったこともあり、姫もある程度の自信を持っていた。

年頃の女子が占ってほしいこと、と言ったらまず恋愛だろう。
バレンタインまで一ヶ月を切っており、姫の部屋には連日連夜、恋する乙女たちが押し寄せてきた。

的中率アップには、まず何よりも相談者の質問が具体的であることが望ましい。
「今年の恋愛運をみてほしい」とか、「わたし、しあわせになれますか」とか、そんなあいまいな質問には、あいまいな答えしか返ってこないだろう。

「この前、合コンで知り合ったD大のカレとつきあいたいの。どういうアプローチがいいかな」とか、「カレ、最近会ってくれないの。他に好きな人がいるんじゃないかしら」とか……。
こういう質問だと、答えも具体的に出易いものだ。

その夜、最初の悩める女子は同級生のリナだった。リナは学部も学科も同じで、この女子寮に入って最初にできた友達だ。
「姫、聞いて~。好きな人ができたの」
「え?」
「ひとめぼれ!」
「あれ? リナ、今つきあってる人、いるよね?」
「うん」
「その人以外に、ってこと?」
「そう。ふたりとも、好きなの」
「で? リナはどうしたいの」
「うーん。だから、姫に相談に来たんだよ」
「まず、確認しておくね。リナは、どうしたいの?」
「リナは」のところを強調して、姫はもう一度尋ねた。

「ふたりと、つきあうって言うのは、ダメ?」
「別に、ダメじゃないよ」
「良かった~。きっと姫ならそう言ってくれると思った」
「じゃ、問題解決ね。タロットに訊くまでもなかったね」
「ううん。タロットやって~」
「だって、もう答えは出てるじゃん」
「どっちと相性がいいか、とか観てもらえる?」
「いいよ」
「ありがと」

姫はテーブルの上に広げられた濃い紫色のクロスの上に、真剣な表情でタロットカードを裏向きにひとまとめにして置いた。
姫は主に二十二枚の大アルカナカードだけで占う。

「これからシャッフルするから、その間、カードを見つめながら、リナの訊きたいことを念じてみて。質問は、具体的にね」
「うん、わかった」

姫は一呼吸置くと、両手でゆっくりとカードの山を崩し、時計回りにかき混ぜはじめた。リナも真剣な表情だ。

「これでいい、って思ったら『ストップ』って合図して」
「うん」

裏向きのカードは、紫のクロスの上でどんどん広がってゆく。
「ストップ!」
リナの合図で、姫は手を止めるとカードをかき集め、最初のようにひとつの山に戻してから静かに言った。
「これから、このひと山になったカードをいったん三つの山に分けます」
リナは黙って、うなずいた。
「わたしがカードを上から少しずつ落としていくので、途中で二回、さっきみたいに『ストップ』をかけてね」
「はい」
いつの間にか、リナの返事が改まっている。

「……ストップ。……ストップ」
左、中央、右と、二十二枚のカードは、数枚ずつ三つの山になった。
「はい。では、これをまた元のようなひとつの山にします。隣同士が重ならないように、順番を変えます。どの順に重ねますか」
リナは一瞬迷ってから、「左の山を、右の山の上に重ねて、その上に、真ん中の山を乗せます」と、答えた。姫が指示通りにひと山にする。

「では、カードを並べていきます」
姫はカードの山を左手に持つと、一番上のカードを裏向きのまま、アルファベットのVの字の谷の部分に、一枚そっと置いた。
次に、二番目のカードをその斜め左上に、そして三番目のカードを、その右隣に置いた。
四番目のカードは、二番目のカードのさらに左斜め上に、そして最後である五番目のカードを、三番目のカードの右斜め上に置く。
こうして、Vマークのような形に、五枚のカードが並べられた。

「この右側と、左側。どちらを今のカレにしますか。深く考えないで、直感で」
姫に訊かれ、リナは「左」と答えた。
姫は大きく深呼吸した。つられて、リナも大きく息を吐いた。

「では、開けますね」
リナは固唾を飲んで、姫の指先を凝視した。
一枚ずつ、並べられた順番にカードが絵柄を見せ始める。



             【episode9 タロット占い(2)に続く】




episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月






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