恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode11 バレンタイン(4)


このお話は、わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode11 バレンタイン(3) の続き になります。

よろしければ、episode11 バレンタイン(1) から順にお読みいただくと、話がわかりやすいかと思います。




ピンポーン、ピンポーン。ピンポーン、ピンポーン。
どのくらいうたた寝をしてしまったのだろう。真っ暗な部屋の中で、寒さと、繰り返されるピンポンの大きな音で慌てて飛び起きた姫。
もう男の帰ってくる時間だったのだろうか。
急いで部屋の電気を点け、インターフォンを取ると、「ハイ」と返事をした。
「誰?」
インターフォン越しに、聞き覚えのない女の声。
「え?」
自分が寝ぼけているのか、外にいる女が部屋を間違えたのか、姫は混乱しつつも用心深く対応しようとした。
「あの~、どちら様でしょうか」
姫が遠慮がちに尋ねる。
「ここ、キタさんのお宅ですよね?」
やや詰め寄るような、甲高い女の声。
「ハイ、そうですけど」
「あなた、誰?」
「あの~、ですから、どちら様でしょう。キタは今おりませんが」
「誰なの?」
自分の名前も言わず、姫に「誰?」としつこく訊いてくる女。姫は怖くなって、インターフォンを切ってしまった。

これって、何なの? 女の影は確かになかったよね、この部屋。どういうこと?

腕時計を見る。午後六時二十五分。予定では男がもうすぐ帰ってくるはずだ。
姫が黙って切ったので、またしつこくピンポンが鳴り始めた。
この感じ、もしかしてドラマによくあるような「修羅場」ってやつ?
もしかして、元カノとか?

姫はとりあえず、居留守を決め込むことにした。一度インターフォンで話しているのだから、居留守だということはバレバレだったけれど、もう二度と話す気にはなれなかった。

このままだと、男が帰ってきたとき、外で鉢合わせするのではないか。そんな心配もあった。
なんとかその前に、男に連絡を取りたい。でも、姫も男も携帯電話を持たない主義同士だったので、どうすることもできない。
そのうち、外の女も諦めて帰ってくれるかもしれない。明らかに、希望的観測だった。


「どないしたん」
外から聞き覚えのある男の声がした。どうやら、鉢合わせのようだ。
「誰か、女がいる」
さっきの女が、姫のことを言っている声だ。
「おぅ」
「寒いから、中に入れてよ」
「あかん、入れられへん」
「なんで?」
「彼女、来てんねん」
「チョコレート、持って来たの」
「そんなん、エエのに」
「せっかく作ってきたのに、受け取ってもくれないの?」
「もらう理由、あらへんし」
「彼女がいるから?」
「そうや」
「じゃ、わたしのことは?」
「前にもゆうた思うけど、別になんとも思てへん」
「いつから、つきあってんの?」
「去年」
「じゃあ、わたしのほうが、もっとずっと前から好きなんじゃない?」
「せやけど、ボクは、好きちゃうし」
「わたしは、好きなの!」
「悪いねんけど、帰ってもろてもエエかな?」


     【episode11 バレンタイン(5)に続く】




episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月





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