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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode11 バレンタイン(5)


このお話は、わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode11 バレンタイン(4) の続き になります。

よろしければ、episode11 バレンタイン(1) から順にお読みいただくと、話がわかりやすいかと思います。




「イヤ。中に入れてくれるまで、帰らない」
外の女はいくつくらいなのだろう。ごねている。

「無理やて」
「なんで?」
「彼女が居てるから」
「バカッ!」

姫は最初こそ、女が乗り込んでくるんじゃないかと怯えていたものの、男の毅然とした態度がうれしくて、途中からそっと玄関に行くと、ドアについている小さな覗き穴から二人のやり取りを見ていた。
そして、女がダーッと走り去って行くのを確認すると、慌ててソファに戻りかけた。
すると、鍵がガチャっと開いて、男が帰ってきた。

「なんや、そこにおったんか?」
「あ、あの、なんか……」
「聞こえてた? 今の」
「うん」
「びっくりしたやろ?」
「うん。ソファで寝てたら、ピンポンって」
「人の家で寝とったんかい?」
「あの、うたた寝しちゃって……。で、ピンポンで起きたら、女の人が……」
「あの子と話、したんか?」
「ううん。インターフォンで『どちら様?』って訊いても言わなくて、逆に『誰?』って、しつこく訊かれて、それでなんか怖くなってインターフォン切っちゃったの」
「そこへ、ボクが帰ってきたと」
「そう。連絡しようと思ったんだけど、できなくて、どうしていいかわかんなくて……」
「ごめんな、怖い思いさせてもーて」
そう言うと、男は玄関で姫をぎゅっと抱きしめた。
男の背中に両腕をまわして、姫はしがみついた。胸に顔をうずめて、男の香りを思い切り吸い込む。アラミス900に包まれて、張りつめていた姫の緊張の糸が一気に解けた。
そんな姫の頭を、男はよしよしと優しく撫でた。

少し落ち着いた姫が言った。
「あのね、晩ごはん作ろうと思って、いっぱい買ってきたんだけど、寝ちゃってたからまだなの」
「ほな、一緒に作るか?」
「うん。ごめんね、疲れて帰ってきてるのに」
「今日は疲れてへんし、大丈夫や」

それからふたりは一緒に水炊きを作って、まったりした。
バレンタインに鍋?と姫は思ったけれど、男の部屋にどれくらいのキッチンがあって、何が作れそうかまるで見当がつかなかったので、まぁ鍋くらいならどこの家でも作れるだろう、と思ってのことだった。

ふたりは食後に、姫の作ったトリュフ・チョコレートを食べた。
「お、うまいな。これ、ホンマに姫が作ったん?」
「うん」
「ボク、ウイスキー・ボンボンあかんねん。けど、これはイケルな」
「良かった」

男が窓のほうに近づいて、カーテンの隙間から外を覗いた。
「雪、積もってんなー」
「ほんとに? 天気予報では夕方から降るって言ってたもんね」
姫も窓のほうに行ってみた。

「すごい、積もってるー」
「このへん、結構積もるんや」
「こんなの初めてー」
「なんや、うれしそうやん?」
「うん。うちのほう、降ってもあんまり積もらないから」
興味深そうに、じっと窓の外を見続ける姫。

それまで横に並んで見ていた男は、ゆっくりと姫の後ろ側にまわった。そして、姫を背中から優しく抱き寄せると、姫の左肩にそっとアゴを乗せた。



     【episode11 バレンタイン(6)に続く】




episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月





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