恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode12 卒業旅行(4)


あくまでも特定しないリナに、少しイラついた感じでしずちゃんが詰め寄ったので、姫が逆に訊いてみた。
「そういうしずちゃんは?」
「わたし? わたしは戸川くんかな」
そう即答するしずちゃんに、少し驚きを隠せない姫。

「え~? そうなんだ。なんか意外。彼、おとなしそうで、ちょっとナヨッとしてない?」
「うん、そういうとこ、母性本能くすぐられるっていうか……」
「へぇ~、しずちゃんって、そういうタイプが好きなんだ? 先月のスキーのときは、男っぽい感じの江崎さんにぞっこんだったじゃない?」
「うん、そうだけど……。でも、戸川くんはなんか、守ってあげたくなる感じ?」
「へぇ~、そうなんだ。戸川くんっていえばさ、みんなで写真撮るとき、いつもわたしが撮ってたじゃない? で、撮り終わったら必ず、『今度替わるよ』ってカメラマン買って出てくれたんだよね」
姫が思い出したように言った。

「そういえば、そうだったね。姫か戸川くんにしか写真撮ってもらってないわ」
リナも思い出したようだ。
「そうよ。他に誰も『替わる』って言ってくれなかったんだから」
わざとちょっとすねた感じで姫が言うと、リナが慌てて謝った。
「ごめーん、姫。いつも撮ってもらうだけだったね。今度からわたしも撮るよ」
「ううん、いいのよ。わたし、撮られるより撮るほうが好きだから。でも、そういうときって、性格が表れるのね、きっと」
軽い嫌味を込めて姫は言ったのだが、しずちゃんにはわからなかったようだ。

「でしょう? 戸川くんって、気が利くのよね」
しずちゃんが、戸川のことを誉めた発言をしたのが可笑しかった。
「しずちゃん、そういうところも見てて、戸川くんのこと、いいなって思ったの?」
リナが尋ねる。

「ううん。今、姫からその話を聞いて思い出したの。今日のランチのとき、たまたまわたしの隣に戸川くんがいたんだけど、みんなにソースとか回してあげたりしてたの」
「そうだっけ? それは知らなかったわ」
姫が言う。

「うん、さりげなくだから。そういうところもいいよね」
「ふーん、しずちゃんはよく見てるのね」
リナがちょっと呆れたような声で言うが、それもしずちゃんには通じない。

「まぁね。で、姫は誰がいいと思った?」
しずちゃんの好奇心は止まらない。

「わたしは……、長瀬くんかな」
「やっぱねぇ。姫は、面食いだもんね」
リナに言われて照れる姫。
「へへっ。でも、長瀬くんって、硬派だよね。女の子とほとんど話してなかったよね?」
「そう言われたら、そうかも。だいたい戸川くんとふたりでいることが多かったような……」
「ほんと、しずちゃんはよく見てる!」
姫も半ば、呆れて言った。


        【episode12 卒業旅行(5)に続く】
  




episode12 卒業旅行(1)
 は、こちらをご覧ください。
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episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月





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