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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(6)


「あの、久しぶり。元気だった?」
「うん、まぁ。どうしたの、今ごろ」
男の素っ気ない返事に、姫の心は折れそうだった。
さっきまでの感動が、うまく言葉にできないもどかしさ。

「あの、去年もらった詩集、ブローティガンの」
「うん」
「今ね、読み返してたの」
「それで?」
どうしてこんなにも意地悪な答え方なんだろう、機嫌が悪いのかな、と心配になりながらも姫は勇気を出して続けた。

「ごめんなさい」
「え? 何が?」
「あの、あれ、プロポーズだったんだよね?」
「あぁ、読んだの?」
「うん、いまさらだけど、返事してもいい?」
「うん、いいよ」
男の語尾が、少しやさしくなっていた。

「わたしも、あなたといっしょに暮らしたいです。よろしくお願いします」
「ねぇ。相変わらず、姫は早とちりだね」
「え? どういうこと? 『いっしょに暮らそう』って、プロポーズしてくれたわけじゃなかったの?」
「ちゃんと最後まで読んだ?」
「うん、最後の詩のとこに、ハートの付箋紙が貼ってあって、そこに『いっしょに暮らそう』って」
「その、もっとあと」
「え?」

姫は慌てて、デスクの上に置いた詩集を広げ、今度は一番後ろのページを開いてみた。



          【episode21 (7)へ続く】





ブローティガンの詩集(1)
 は、こちらをご覧ください。
   ↓
http://cafesanur.blog.fc2.com/blog-entry-215.html







episode1 から読んでみたいかたは、こちらからどうぞ。
   ↓
わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(5)


今すぐに電話したい気持ちを抑え、さらにページを繰っていった。
最後の詩。

Boo,Forever

Spinning like a ghost
on the bottom of a
top,
I’m haunted by all
the space that I
will live without
you.




池澤夏樹さんの訳。

べえー、永遠に

こまの底にしがみついて
ぐるぐるまわる幽霊のように
 ぼくは
きみなしで
生きる宇宙の
広さにおびえて
 いる。




そして、またハートの付箋紙。
【いっしょに暮らそう】

あぁ、なんてわたしって、バカなの!
姫は自分の鈍感さを呪った。

去年、誕生日にプロポーズしてくれてたのに、全く気がつかなくて、今度いつ逢える、だとか、プレゼントを送るだとか、そんなトンマなことばっかり言って。
きっとこんな姫に、がっかりしていることだろう。いや、幻滅しているだろう。
呆れ返って、もう他の女の子とつきあっているかもしれない。

それでも、後悔に交って、うれしさや愛しさのほうがあふれかえり、姫はとうとう男に電話した。



          【episode21 (6)へ続く】




☆参考文献☆

『チャイナタウンからの葉書』
R.ブローティガン 著
池澤夏樹 訳
株式会社 筑摩書房
2011年5月10日 第一刷発行





ブローティガンの詩集(1)
 は、こちらをご覧ください。
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わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode1 三日月








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恋愛小説:わたしがまだ姫と呼ばれていたころ

わたしがまだ姫と呼ばれていたころ episode21 ブローティガンの詩集(4)


積んである読みかけの本の一番下から、詩集『チャイナタウンからの葉書』が出て来た。
ブローティガンは、姫は読んだことがなかったけれど、池澤夏樹さんの訳だというので、すんなり入ってきた。彼は大好きな詩人だ。

「この本。そうだ、去年の誕生日にカレがくれたんだった」
途中まで読んで、なぜかそのままになっていた。
懐かしくなって、開いてみた。

片づけも忘れて読み進めていくと、栞がはさんであった。そうか、ここまで読んでたんだ。
さらに読み進むと、姫は「あっ!」と思わず、声を上げた。
ブローティガンの詩を引用する。


The Beautiful Poems

I go to bed in Los Angeles thinking
about you.

Pissing a few moments ago
I looked down at my penis
affectionately.

Knowing it has been inside
you twice today makes me
feel beautiful.

         3 A.M
         January 15,1967




続いて、池澤夏樹さんの訳。

ビューティフルな詩

ロサンジェルスできみを想いながら
 ベッドに入る。

さっきおしっこをする時に
自分のおちんちんをよく見たんだ。
 かわいかった。

今日これがきみの中に
二度入ったんだと考えると
 ビューティフルな気持ちになる。

        一九六七年一月十五日
        午前三時




そして、そのページにハートの付箋紙が貼ってあった。

【これが、僕の気持ち。19XX年12月25日。午前3時】

カレの文字だった。
姫はその瞬間、鼻の頭がツンとして、目が潤んで文字が揺れるのを感じた。

全然、気づかなかった。もらってから、もう半年になる。
去年の姫の誕生日、2回愛し合ったのも事実だった。
カレは、この本と同じことを……。シャイなひとらしかった。

姫は、「ごめんね、ごめんね」と、本に涙の雫を落としながら、そこにいない男に謝った。


              【episode21 (5)へ続く】





☆参考文献☆

『チャイナタウンからの葉書』
R.ブローティガン 著
池澤夏樹 訳
株式会社 筑摩書房
2011年5月10日 第一刷発行


       





ブローティガンの詩集(1)
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